こんにちはMr.レフェリーです。「いつでも、自由に、好きな時に、スポーツ生観戦ができるライフスタイル」を提案しながら、大好きなアメフトをみなさんに知ってもらいたいと願っています。
第八回はスペシャルチームです。一般的なポジションの説明、そして「選手に一番近いところにいる審判だからこそ語れる」ポジションの特徴、さらに本場アメリカン人にも自慢できるポジションにまつわる話を紹介していきます。アメフトではスペシャルチームの出来が勝負を分けると言っても過言ではありません。①キックオフ、②パント、③フィールドゴール の3つのシュチュエーションでスペシャルチームが登場します。オフェンスやディフェンスのポジションと比較すると、「控え選手」という印象がスペシャルチームにはあると思いますが、スペシャルチームのメンバーは、とにかく一芸に秀でている選手達なのです。例えば「足がとにかく速い」とか「ロングスナップが正確にできる」とか「キック力がある」などです。①〜③のシチュエーション毎に必要とされる選手の能力は異なり、そのワンプレイのために日々鍛錬を積む選手たちです。①キックオフ、②パント、③フィールドゴール それぞれを取り挙げ、紹介したいと思います。キッキングを制するチームはゲームを制する!
キッキングではフルスピードでのコンタクトを見逃すな!
アメフトはキックオフから試合が開始されます。自陣20ヤードからAチームのキッカーが敵陣地深くまでボールを蹴り込み、Bチームがそのボールをリターンします。この時、Aチームを「カヴァーチーム」、Bチームを「リターンチーム」と言います。リターンチームは1ヤードでもボールを前進させようとし、カヴァーチームは1ヤードでも前進させまいと必死にボールキャリアへ襲いかかります。
キッキングゲームでは、アメフトのプレイの中で一番激しいコンタクトが観られるといっても過言ではありません。オフェンスの攻撃ではあくまでも10ヤード以内での加速程度でコンタクトを行うのに対して、キッキングでは何十ヤードと走ってフルスピードに乗った選手同士がコンタクトをします。相手に当たる恐怖、痛みといったものを克服した選手同士の戦いなのです。
カヴァーチームとリターンチームについて少し詳しく説明しましょう。まずはカヴァーチーム。ボールを1ヤードでも多く前進させる、もしくはそのままタッチダウン(リターンタッチダウン)を狙うためにチームで一番のスプリンターを起用します。ただ走るだけでなく、高く舞い上がった楕円球を捕球するための技術も必要なため、WRやCBの選手が起用されることが多いですね。そしてフロントにはOLのようなブロッキングに長けた選手を配置して、フルスピードで走ってくるカヴァーチームをブロックします。通常のオフェンスプレイで10ヤードを獲得することは容易ではありませんが、キッキングゲームではスペースを広く使える分、獲得できるヤード数も多くなります。ビッグゲインすることは自チームの攻撃のモチベーションに大きくつながり、リターンタッチダウンとなれば勝利をも手繰り寄せる勢いを引き寄せることができます。リターンチームの出来/不出来がチームの勝敗に影響することは大いにあるのです。
次にカヴァーチーム。リターンチームの前進をストップする役目を持つ彼らは、できるだけ早くボールキャリアーへ到達することが要求されます。キッカーは滞空時間の長いキックをすることで、リターンチームがボールキャリアーへ到達する時間を稼ぎます。キッカーを中心にして、左右5人ずつ配置されます。それぞれがレーン(横の距離感)を守って走ることで、ボールキャリアーが走る隙間を無くします。中心から左右2人目までの選手はボールキャリアーがフィールド真ん中を走ってくるのを潰します。中心から左右4人目の選手は「ジェットマン」や「スプリンター」と呼ばれ、スピードのある選手が起用されます。一番早くボールキャリアへ到達してタックル、もしくはその動きを遅くする役割が求められます。中心から左右3人めの選手は「タックラー」と呼ばれ、ボールキャリアをタックルする役割を、中心から左右5人目の選手は「コンテインマン」としてサポート役になります。ただ闇雲に走っているだけでなく、それぞれに役割を持っていることもカヴァーチームの特徴です。
パントこそ最大の攻撃・防御!
キッキングを制するチームはゲームを制する!これはパントのことを表していると言っても過言ではありません。つまり、パントを制するチームはゲームを制する、パントこそキッキングゲームで最重要なのです。
オフェンスは4回の攻撃で10ヤード前進することで再度攻撃権が得られます。しかしそれが不可能(10ヤード前進できない)と判断した場合、ボールを前方に蹴り、攻撃権を放棄し陣地を回復することができます。それがパントです。例えば、3回目の攻撃を終えた時点で10ヤードまで残り5ヤード(3ダウン残り5ヤード)、自陣20ヤード付近でのオフェンスを想定します。4回目の攻撃で5ヤード前進できれは再度攻撃権が与えられるのですが、失敗した場合そこで攻守交代、自陣から相手チームの攻撃がはじまるのでタッチダウンの可能性が非常に高くなります。それを避けるために、4回めの攻撃でプレイをせずにパントを選択し、相手の陣地の奥までボールを蹴り込みます。相手のリターンをできるだけ奥で阻止することができたら、余裕をもって次のディフェンスをすることも可能となります。
パントが重要な点として「相手のリターンをできるだけ奥で阻止することができたら、余裕をもって次のディフェンスをすることができる」ということです。パントを蹴ってリターンを相手陣地奥深く、例えば10ヤード付近で止めたとしましょう。ゴール前からの攻撃は非常にやりづらいもの、QBがパスをしようとドロップバックすれば、QBサックをされセイフティー(2点)にされる可能性があり、ファンブルやパスインターセプトをすればインターセプトリターンタッチダウンの可能性があります。オフェンスは必然的に無難な攻撃をするしかなくなります。そういった場合のディフェンスは安心して守備をすることができます。相手の攻撃を食い止めパントに追い込むことで自チームに攻撃権が移ります。かつ相手自陣深くから蹴られたパントは自陣までは届きませんので、中央もしくは敵陣近くで攻撃権を得ることができ、タッチダウンの可能性が高くなります。それが「パントを制するチームはゲームを制する」という理由なのです。
パントは攻守が入れ替わるだけの単純なプレイのように捉えられがちですが、ゲームの勝敗を左右する非常に重要なプレイなのです。そこには、正確なロングスナップができるスナッパー、正確なキックができるパンター、蹴られたボールをリターンするアスリートのリターナーの存在があり、見どころのあるプレイが満載なのです。
フィールドゴールの1点が勝敗を決める
フィールドゴールはキックで得点を狙うプレイです。得点は2通りあります、①タッチダウン(6点)後に得られるTFP(トライフォーポイント)で獲得点は1点、②4回の攻撃中に狙うキックで獲得点は3点です。
TFPは敵陣3ヤードからのスナップボールで開始されるため10ヤードほどのキックで十分です。攻撃中に行うキックはルール上どこから狙っても良いのですが、失敗すればその地点から攻守交代のため自陣から行った場合は非常にリスクの高いプレイとなります。NFLでも最高40〜50ヤードぐらいがフィールドゴールレンジとなります。フィールドゴールを確実に決められるキッカーがチームに入れば、それだけで得点の可能性が大きくなります。オフェンスは相手陣のある程度のところまで責められれば得点が狙えるという安心感が生まれます。その分攻撃にも余裕が出てきますよね。
アメフトの得点はタッチダウンで6点と非常に大きな数字のため、TFPの1点が非常に軽く感じられがちです。しかし、1点差のゲームもけっこうあるんですよね。TFPを確実に決められるか/決められないか、という結果はチームのモチベーションに直結して、ついてはゲームの勝敗に行き着くのです。
キッキングを制するチームはゲームを制する!
何度も繰り返しますが「キッキングを制するチームはゲームを制する!」です。キッキングは攻撃に比べて何倍もの距離を移動できるプレイであり、その積み重ねが勝敗につながるのです。そして、フルスピードからのフルコンタクトという最もアメフトらしいスピードとパワーの勝負が観られるのもキッキングなのです。それを支えるのがスペシャルチームなのです。
アメフトのスペシャルチームについて、その特徴をお分かりいただけたかと思います。彼らのプレイ、その勇姿をスタジアムで観ていただきたいです!
アメフトについては「アメフトとラグビーの違い」と「アメフトの試合時間」について別の記事で紹介をしています。こちらも参考にして、アメフトをより詳しく知ってください。
「いつでも、自由に、好きな時に、スポーツ生観戦ができるライフスタイル」を手に入れ、一人でも多くの方が一日でも早くアメリカでアメフト観戦を実現して欲しいと願っています。